扉座 お伽の棺2020~12月29日~17時開演~感想

12月29日~17時開演~

会場はすみだパークシアター倉(そう)

トイレは女性用・男性用1つづつで兼用が1つ。

ロビーから座席までが真っ暗でめっちゃ怖いですw
席は一つおきに配置

はじめ、真っ暗で役者が白い蝋燭へ一つ一つ火を灯し、徐々に明るくなる
中央には囲炉裏を思わせる赤い蝋燭の灯り

床には藁が敷かれていて三方が蝋燭で囲われている。
物語の始めに演奏される尺八の音色が厳かでしたね。

鶴の恩返しをモチーフにして、ひと冬に「嘘偽り」を語るのが忌み嫌われる雪深い村の家で起きた出来事

犬飼さんが演じた善治は名前の通り村での教えである「嘘偽り」を嫌い、
純粋な男
本当に純朴で、素直で。母親である清の言い付けを守って生きてる姿が想像出来る話し方や、仕草に引き込まれていきました。

雪道で女を拾って、家に連れ帰ると砂田桃子さんが演じる鶴と名乗る女は何でもするから、助けてくれと懇願するが中原三千代さんが演じる老いた母親「清」は余所者は「偽り」を持ってくるから早く捨ててこい。と善治に命じる。
結局、その言いつけを守らずに連れて帰った事から悲劇は始まっていくけど、なんとなく母親は善治に母性以上の只ならぬ愛を向けていたんじゃないかなぁと思った。
もう既に居ない夫の影を息子である善治に重ねて親子以上の触れ合いがあったのかも。と
だからこそ、拾ってきた女を嫁にしたいと告げたときに普通の母親以上に女に対して嫉妬心を覚えて殺そうとしたのかと。

結局、清が鶴を殺そうとして清が殺されてしまうけど、長者様に渡す布を取りにくる岡森諦さんが演じる嘉六さんにはその事を隠して
村の女の冬の仕事である「機織り」を鶴が織り、その布は見たことがないくらい白く、美しいもので・・・・

最初に鶴と告げた女は、本当は異国から来た女で
ある意味強かさを感じた。
貧しい村で売られてそこから逃げ出して。
死を覚悟していたところもあるからこそ、善治の嫁という確かな居場所が欲しかったのかも。
ただ、そのために心を捨てた訳じゃなく、善治に対する愛を感じたのは救いだったなぁ。

結局春が来て、庭に捨てた清の死体が雪解けと共に現れて
嘉六さんに問い詰められて、真実を話したのにそれを全部異国の女のせいにされて、女を捕まえるべく
村のものが集まって荒らされた機織りしていた場所
鶴が辺りを灯していた蝋燭を消していき、最後残った1本の蝋燭を手に持ち、善治の目の前で消されたのはゾクッと来ました。

善治が産まれてきてから村の掟である偽りを語ってはならぬ。と教えられてきたからこそ、清を殺したことにより嘘を重ねて
苦悩していくけれど、嘉六さんが語った村の「偽り」を嫌った理由が横内さん流石だわ…と思いました。
善治がそれを聞いたときの切ない顔が全く知らなくて、偽りはいけないものだと教えられてきたその真実が
生きていくためには仕方がないことだけど、たちが悪いというかそうだったのかー!!!!!ってなりました。

物語の随所で舞台の端の方で演者さんが出される効果音が雪深い場所を表現していて、そこまで自力でするのがすごい。
何をしたらこの音が出るの?と見たくても蝋燭の明かりでは見えないw

最後、挨拶に来た時の清のメイクが明るい中で見たらすごく怖くて。
これなら殺されるわ。。。と思いつつ、暗い中だとそれくらい過剰なメイクが丁度いいのかも。

これを見て、安田さんが出てた愛しのアイリーンを思い出しました。
彼も嫁がいなくて、海外へ買いに行って異国の花嫁をもらい、母親が外人の嫁を認めず破滅の道へ・・・

…父親より母親の方が愛が深くて怖いのかも。

2020年は観劇することがしばらく出来なくなった年でしたが、そんな年の締めにあった
蝋燭の明かりだけで4人だけで演じられるシンプルだけど奥深いお芝居が見れて良かったです。